死体を愛する小娘社長の日記

小娘の葬儀社社長の私が、本心だけストレートに書く日記。社会 時事・各種宗教・社会哲学・古典・日々の出来事など

キティちゃんの貯金箱

 

今年、子供の葬儀受注が多すぎる。

 

 

なあ…

その歳で死ぬなってよ……

 

何で白血病なんかで死ぬの?

何で治らない2割の中に入るの!!

 

 

  親の命数かっぱらってでも生きろって

 

 

私達にとっては、子供の葬儀も風呂でダシが取れそうな老人の葬儀も同じ……

 

 

人の死に慣れてしまった私でも

  子供の葬儀は…柔らかい部分を傷つける

 

そして、普通では居られなくなる

 

 

 

………………今朝…

  一人の女の子を送った

 

5歳の女の子

 白血病だった

 

 

この女の子には宝物がある

 

    「キティちゃんの貯金箱」

 

 

通夜の前、

ある葬儀の参列から戻ってくると

 

………担当の女の子が

「1部長がトイレで吐いてる…」と………

 

 

彼女は子供の葬儀が2施行続いた

 

 

気遣いと緊張……

 

ワケの分からない哀しさ

  それでも彼女はここまでやったんだ

 

 

私の鋼鉄の心でさえ深くえぐられる

彼女の金の心は更に深く傷付いたのだろう…

 

 

でもね、こうやって否応なしに

   強くなって行くんだよ…私達は

 

 

 

 

今朝、私は専務が作ってくれた

  浄土までの道中に食べるお弁当を……

 

お母さんが

「キティちゃんの貯金箱」を彼女に持たせた

 

 

  この子の表情が微かに変わり

    嬉しくて笑っている様に見える

 

 

 

“どうかこの子を守って”……

私はこの貯金箱に手印で九字を切った

 

 

『臨める兵、闘う者、皆陣をはり列をつくって、この子の前に在り』

 

 

この貯金箱しか

私の鋼(はがね)の心を宿す依代がないから……

 

 

 

棺の蓋を閉じようとすると

 

「ちょっと待って!!」と1部長が叫んで、貯金箱に札を貼り付ける

 

『何の札?』

 

「旅の途中、この子の貯金箱に触れた亡者は、即滅ぶと呪(しゅ)を書いた」と

 

 

   そうだよ…貯金箱はこの子だけの物だ

 

 

 

私は後ろに居た住職に

「住職!!この子は何処へ行くんだ!?」と問う

 

『密厳浄土(みつごん)へまいります……』

 

 

「大師は間違いなく優しく手をつないで、一緒に旅をしてくれてるんだろうな!!」

 

『間違い有りません』

 

 

         当たり前だ、この子は何も悪くない

 

      悪くないんだよ!!!

 

 

 

 ………………もう…

  私達に出来る事は何も無い

 

 

部長が棺の蓋を閉じる時

 

「バイバイ (^-^)」って弟が小さな手を振った

 

 

いっぱい…いっぱい振った

 

 

私の気力の糸が切れた

涙がこぼれた…

 

私は……泣いた

いっぱい、いっぱい泣いた

 

 

可哀想で

 可哀想で泣いた…

 

 

 

空海は云う

 

悟りを開けば 
この世の悲しみ 驚き  
すべて迷いの生み出す  
幻に過ぎないことはわかっています  

それでも 
あなたとの別れには  
涙を流さずにはいられません

 

私も…皆も

声をあげて泣いた………………

 


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………間もなく火葬場と部長から連絡が来た

 

 

あの子の意識は量子の海へ帰って行く

 

 

あの子が生きていられたなら

 

  貯金箱のお金…

    何に使ったのだろうか