死体を愛する小娘社長の日記

小娘の葬儀社社長の私が、本心だけストレートに書く日記。社会 時事・各種宗教・社会哲学・古典・日々の出来事など

心の折り

 

………火葬までの170時間に…

 

冬の終わりで 途方に暮れないように

耳をふさいで走り出す君の となりにある虹にぼくは なりたいいつだって……

 

ぼくは雨となり星となる

米良 美一 

 

 

昨日、この曲を残して逝く家族へのラストメッセージとして自ら歌い、火葬場の露となった父親がいた

生前に私達と歌を動画に残し、告別式の最後に生バンド演奏とリンクさせる

 

 

東京は火葬場の数が少なく火葬まで平日で4日、年末年始は7日以上かかる場合もあり、遺族に普段とは違う感情を抱かせる

 

故人はある中堅会社の常務から紹介された40代の人で、年末にホスピスで亡くなり昨日が告別式。

ひかり(後輩社長)が担当だったけど、他の葬儀屋が自宅安置していた遺体に腐敗網が出来て、化粧(けわい)に時間がかかり急きょ私が代わった

 

 

お父さんの下手ッピな歌……

でも心の一番柔らかい所をぎゅっとつかむ歌

 

  皆、ぐちゃぐちゃになって泣いた……

 

 

私は遺族が火葬場に行った間に斎場担当と正月登板の女の子達に家族の様子を聞いた

この家族は、お父さんが亡くなった日からずーっと亡きお父さんと共に過ごし、晩ごはんは奥さんと中学生の兄弟二人、亡きお父さんと四人で食べてたそうだ。

(お父さんのお膳も用意して)

 

 

でもその様子は時と共に変化していく

 

最初は涙ぐみながら……

じきに笑顔でお父さんに話し掛けながら

 

通夜が近づくと寂しそうに……

通夜前日には、目の前の現実を受容したみたい

 

火葬場から帰ってきた家族は前を向いて父親の居ない世界を歩こうとしている

…………遺骨と共に帰る家族は深々と頭を下げて、悲しいけど爽やかな顔で帰って行った

 

亡き人のために出された料理は決して減る事はなく、亡き人が生きている者と同じようにふるまえるわけがない

 

例え骨になるまで焼かれても
例え冷たい雨の降る中で突っ立っていても、虹の橋を渡ったお父さんは熱さも寒さも感じることは無い。


 いや、例え感じていても、

   私達にそれを知るすべはない

 

結局、疲れ傷付いた心を癒すのは

          時間だけなんだ

 

でもお父さんは亡くなる前、家族にメッセージを残した

僕は雨になり 君を守るだろう
僕は星になり 君を照らすだろう…


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この曲は映画死国のエンディングテーマ

「死んだら『好き』という気持ちも、死なないかんがか!」と言う言葉がある

 

いや……死なないんだよ

いつどんな時もお父さんは家族のそばにいる

気持ちは永遠に生きている

「短かったけど良い人生だったね!残した家族が困らない様に守ってあげて」

 

 私は家族の横で歩く「白い影」にそう思った

 

         …………桃子の日誌…