深い夕闇が覆う……
ビルの深い谷をフライングレディーは飛ぶ
過ぎて行く人々は闇に溶け……
出会いも別れも、喜びも悲しみも闇に溶け…やがて時すらも止まる
表情を永遠に捨ててしまった女がいる
ビルのシャッター…路地の階段の下に
私が知ってる子……
ここで死んだんだよね
ドライバーは車を止め
秘書がドアを開ける
私は側に行き手を差し伸べた…
彼女は心を打ち明けたら
涙をいっぱい浮かべて
「思い出す」って言うんだ
忘れようとしていた恋人の事を………
毎晩、灯りから身を隠して
時を感じない…長く終わりのない夜に居る
毎晩、灯りから身を隠して
心を偽る事が出来る長く終わりのない夜に…
貴女の居場所は
ここじゃあ無いよ……
時が止まり
思い出がすべて消えて
現実が何もないところ
貴女自身の
すべてが許され甘く溶ける……柔らかなところ
彼女は私の手をつかんで
立ち上がり……
ノエルちゃんが道を示したら
フウッと…ビルの闇に溶けた
さようなら
また人に生まれておいで…………
振り返ると
アレクちゃんは窓から体を乗り出し
秘書の女の子と運転手さんが白手袋を付けてドアを開け、
微笑みならから私を招き入れてくれた
私も帰ろう
すべてが許され…
甘く溶けるところへ