死体を愛する小娘社長の日記

小娘の葬儀社社長の私が、本心だけストレートに書く日記。社会 時事・各種宗教・社会哲学・古典・日々の出来事など

アゴが長いおじちゃん

 

 

真夜中

専務が連れて来た自宅葬の遺体には

 

アゴの右下に垂れ下がる様に…

顔の半分近くある大きさの、柔らかくて長く伸びた肉塊がある。

 

 

 

アゴの骨が変形したわけでも、中に粉瘤があるわけでも無い。

ぷにょぷにょって感じ

 

 

 

専務に

 

『何これ?』

 

 

「判らない、死因と無関係みたいだし…」

「これ取ってくれない?」

 

 

と遺族からの依頼だそうで

また…深夜に呼ばれた( -_-)o

 

私と後輩社長は、それぞれアメリカ某州ENBMの資格持ちだ

 

 

 

電メスで切開

太い血管等を結紮しながら切り進め、2時間程で切り離し……

 

 

 

…乾燥を考慮し、皮膚の少しだけ下を縫い合わせて傷跡を消した

 

 

塊は重さは1キロ近くある

筋肉でも脂肪でも無い様な…臭く無いから癌じゃない。何だこりゃ??…………

 

 

 

………朝、専務がお弁当を持って来てくれて

コーヒーも入れてくれた……

 

専務によると

 

 

「あのコブを取る費用と、修正遺影の費用、葬儀代を即金で出したのは、故人の勤め先の社長」

 

 

勤め先の社長曰く

30年近く自分の会社で工事現場の交通誘導員の仕事をやっていたそうで(非正規で)

出社前、自宅で心不全で倒れて亡くなる

 

 

 

遺族の老夫婦にはお金が無く

 

葬儀代と…ずーっと本人が気にしていた「顔」を治せるのを専務から聞いて即、依頼したそうで

何か…善意の裏側に見える「ナニ」が判るけど、何はともあれ葬儀はされるのだ。

 

良かったね、おじちゃん

 

 

 

このおじちゃん…

 

年齢は55歳

バブル期の真っ盛りを生きた人だけど、最初から交通誘導員のバイトで両親と生活している。

 

 

あの時代、若い人が生活の為にバイトとして交通誘導員をやると云うのは少ない。

多分、あのコブが問題で、何処も採用せず、いわゆる3Kしか働き先が無かった感じ………

 

 

 

…………私は見た目に付いて何度も書いた。

 

人間性など短時間では判らず、

100%見た目のイメージから内面が想像され判断されてしまう

それは身なりから判断される事が多い

 

 

しかし身体の形状の場合、それとは違う

      私も…多分採用はしないだろう

 

 

 

遺体の安置場所と、祭壇の設置場所の確認の為に自宅へ下見に行ったキャンディは

 

 

「リビングには物が溢れていたけど、彼の部屋には物が少なくキレイ」だそうだ。

 

 

至って普通の人だった

        あのコブ以外は

 

 

 

隣の斎場で1部長が葬儀をやっている。

私は別れ花を分けてもらい、小さな花束を作り棺に入れた

 

 

ノエルちゃんは

「モモ…ここにも」…そうだよね…

 

切り取った肉塊を入れた容器の中にも一輪のカーネーション

 

 

 

…………さっき専務に連れられて

   おじちゃんは自宅へと帰っていった

 


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 何故、生きてる時に切除しなかったのだろう

 

  このおじちゃん…幸せだったのだろうか…?

 

 

 

やはり神は不公平のサイコロを振る

 

           切ない……本当に…