土日祝日……
総務局は、夏休みのお小遣いと生活費を稼ぐ為、学生社員の殆どと、声を掛けたバイトの女の子達が、フルタイムで出社している。
なので…自宅葬や直葬を任せられる女の子に振り分け時間を作り…
役員の四皇は、身辺警護員を頼んで3時間殆ど世の中の見聞をする。
四人とも自由が無いのは…まぁ「身から出たサビ」だから仕方が無い
昨日は私の番で、昼過ぎに「速見御舟」を見に山種美術館へ行った。
私が丸一日でも見ていられる作品が数多くある…
中でも…………
《炎舞》
《百舌巣》
百舌巣は、技法とか関係なくて「可愛い」からずーっと見ていられるし……
炎舞に至っては……
明王の仏炎に集まる蛾が、外炎の向こう側にある世界に昇華されていく感覚…
仏炎の抽象的な技法と、上炎の写実的な技法との接合が素晴らしいくて、全然見飽きない。
それと…どう描くのだろう?
ただの黒色なのに、奥深い空気感で、
手を当てるとそのまま吸い込まれてしまいそうな「不思議な黒い闇」もいつまでも見ていられる。
「速見御舟の絵って見た事ある?」と警護員さんに聞くと「まだありません」と言うので、昨日は順番に見て回った
いつも腐ったり…バラバラだったり…
死体ばっかり見ていると、心も荒み、遺体復元にも、ピアノの音色にも悪いし、ノエちゃんにも良く無い
だから綺麗なものを見る事は、私達技術の4人に必要な事なのだ…………
…………本部斎場に帰って来ると
スタジオでウチのガールズバンドが、明日(今日)の音楽葬告別式のリハーサル……
出棺直前に演奏する
『しょげないでよbaby』の演奏中
明日の(今)晩「はじめてのおつかい」の放送があるので、告別式の印象を、記憶に強く書き込む事が出来るから。
数人の読者の方が聞いた
ABBAの『The Winner Takes lt AII』演奏と同じバンドメンバー
ヴォーカルだけは、当社のブルース系首席の女の子。
第一声を聞くだけで、ゾヮ~っと鳥肌が立つ
『しょげないでよbaby』は、小っちゃな男の子がお母さんに「頑張って」と一生懸命慰める歌。
若いお父さんを亡くし、
これから小っちゃな男の子と二人きりで、人生の新しい折を迎えた若いお母さんを励ますのにピッタリ……
なんか…
不覚にもウルウルってなってたら……
後ろにいた警護員さん二人とも泣いていた
…………先ほど…
『しょげないでよbaby』の演奏が終わり…
四華花を持った男の子と、遺影を持ったお母さんが…
リンカーンリムジンの霊柩車に乗り込み火葬場へと向かう。
しょげないでよBaby
だけど好きだよ
ママの香りとやわらかな胸が
しょげないでよBaby
幸せさパパは
僕もステキな大人になってあげるさ
そうだよ……
君がお母さんを守るんだ…
少し大人にも見える…その小さな手でね
さあ、私も帰るのだ
子供達の待つ総務局へ
花束の代わりに……
あの子達に剥いてもらう
両腕いっぱいの『桃』持って……
…………Sentimental Journey