昨日の昼下がり
死産児の引き続きの連絡が入る
安置場所に行くと
ガーゼが引き詰められた小さな段ボールの箱の中で寝ている……
中を確認した瞬間に、随行秘書の女の子が倒れてしまう。
小頭で、目があるのか無いのか判らない
明らかに人には見えない
死産証書の部分を見ると『染色体異常疑い』『13トリソミー』と書いてある。
18トリソミーの死産児や死亡新生児は年に一人くらい受注するけど、13トリソミーはこれで2人目
旦那と母親側の両親だけでなく、母親本人も見てしまった
死亡胎児でも自然分娩で産む…その時にだそうだ
エコーでの異常、出生前診断でトリソミー児が産まれる確率が高く……
胎児の表情も違う事を知っていても、衝撃は大きかったはず
秘書の女の子が気絶している間に、
旦那と母親側の両親と必要な書類等に記載してもらい、今後の進め方を決めた。
当然、葬儀はしない
母親本人の為にも、無かった事にしたい
両親や両祖父母の全員がカトリック…
中絶をためらっている時の出来事で、『早く忘れたい』としきりに言う…
『後は全て私達におまかせ下さい…』
この間死んだ暴走族の母親と同じ…子供は捨てられた
しかし…暴走族の母親の場合とは違う
この母親は立ち直らなければならない
その為には
『自ら進んで忘れる』事も必要なのだ……………
…………秘書の女の子も気が付いた
私が赤ちゃんの着替えをして、タオルで包み、抱いて裏から車に乗る。
………秘書の女の子にキャンディ×2を電話に出させ『洗礼を受けさせるから、直ぐ第一復元ラボへ来る様に』と指示
キャンディは
当社唯一の『クリスチャン』で、しかもカトリックだからだ。
この赤ちゃんは
法律上…まだ死んではいない。
故に、生きているウチに『洗礼』を受けさせる
阿頼耶識(あらやしき)などが存在していた場合、
この赤ちゃん本人が、洗礼を受けていないと、煉獄に行くのではと心配するからだ
その後、死産届を提出後
聖体拝領を行い死んだ事にする
キャンディが来て洗礼式を行う前に
『この子の名前は?』と………
スッカリ忘れていた。
『陽菜ちゃん』と名付けた
キャンディは以前に見た通りに洗礼式を決行し…
陽菜ちゃんは晴れてイエズス会の仲間入りを果たしイエスの王国へ行く事ができる
『どうしてこの赤ちゃんなの?』
一緒に付いてきた年長の子供役員の女の子が、キャンディに聞く
『神は…でたらめにサイコロを振るんだよ』
と答えた
そう…ヤファエはサイコロを振り、信者の信仰を試す……
しかも…イカサマだ
陽菜ちゃんも、両親も……
何も悪く無いのに
諸悪の根源は『神ヤファエ』だ