……命は強くて儚い…
昨日の夜
小さな遺族控え室でキャンディがハーモニカを吹いていて…私に目で合図を送る
私はキャンディのハーモニカで
「シャボン玉の歌」を歌った
シャボンだま とんだ
やねまで とんだ
やねまで とんで こわれて きえた
シャボンだま きえた
とばずに きえた
うまれて すぐにこわれて きえた
かぜ かぜ ふくなシャボンだま とばそ
故人…いや妊娠周期22週直前で逝った赤ちゃんだから法的にまだ人ではない
一週間前に流産したお母さんは37歳、妊活してやっと授かった赤ちゃんだった
身長20センチの小さな赤ちゃんは、茜ちゃんが編んだ真っ赤な服を着て、お母さんが用意した子供用の布団で寝ていて
お母さんは赤ちゃんの横で泣き疲れて寝てる
「アネゴ、なんで私らは産まれるんだろう…」目を真っ赤にした茜ちゃんが聞く
『分かんないよ誰も…誰も分かんない』
でも生きてる者は、分からなくても精一杯生きなきゃならないんだよ
今日、赤ちゃんの体は素粒子の海へ帰る
「かぜ かぜ ふくなシャボンだま とばそ」
また必ず……
お母さんの子供に産まれてくるんだよ
……桃子の日誌…