都内や近郊など
火葬場の絶対数の問題で葬儀まで日数がかかる
いま現在…ウチの5箇所の復元所の斎場死体安置ブロックがある。
部屋は窓のない光触媒加工され死臭も無く、隅も角も丸く…
影も殆ど出来ない、とても明るい床も真っ白。
全ての灯りを点けて…
何も無い状態で長時間いると、白が永遠に続いて、宙に浮き平衡感覚がなくなり発狂しそうになる狂った部屋
ここは……
子供達が
『私達は境目も無い連続した宇宙』で
『私達は自分という役割を持って集まった仮の量子集合体』だという事を
自らの体感を持って理解出来る様に改装された部屋。
そして子供達には
『何故、この人達は死んで私達は生きているのか?』正解の無い質問の答えを考えさせる。
………一昨日、一緒にコーヒーを飲んだ、いま目の前で寝ているおっちゃんが、私の横でこの部屋の事や自分の事を色々と話をしている
癌は痛いぞ……
頭をハンマーで殴らたくらい痛い…
とっても眠い……
如何すれば良いのかわからない……
わからない………わからない……
あの時はああだった…こうだった
こうすればよかった…ああすれば良かった…
見たい物だけを見て、語りたい事しか語らない
それが量子の振る舞い………
毎年…私と後輩社長はクリスマスイブの前夜、安置ブロックで一人、死者達に酒を振る舞い対話する。
30体程の遺体が並んでいる…
黒猫のノエルちゃんが大きな声で鳴きながら棺の上を渡り歩き、一人一人の死者を臨検する。
まるで死者を統べる者の様に………
まるで私を守る様に…
今宵…規則的に広がる白雉の時空を
………様々なものがその存在で時空を大きく歪めなから訪れる……………
そして語る。
…………やがて朝が訪れ…それらは彼らそれぞれの闇に帰る。
そして違う者達と入れ替わる……
……夜が明け
私は告別のコーヒーを、目の前の着飾ったおっちゃんを見ながら、横に座っているそのおっちゃんと共に飲む。
死にたくはなかったと……
ワルキューレの馬車が迎えに来た。
おっちゃん……告別だ…
明日…おっちゃんの体は理(ことわり)に従う
さあ、私も帰ろう。
仲間達と子供達の所へ…………