生き物って…
何か強い目的があると簡単には死なない
私の前で寝ているお母さんもその一人
トラックに巻き込まれて
両足から右側骨盤…右腕が粉々…
頭蓋骨の側頭部と右耳が無い
担当のロリポップ常務に依ると
小学六年生と小学四年生の娘がいるそうで
子供達は集中治療室に居た母親の顔をまだ見ていない。
父親が躊躇するくらいの凄い死に顔って言うより…“顔が無い”が正しい………
死にたくなかったんだろうな………
その状態で1日半持ちこたえる
私達を良く知ってる医者の紹介でやって来た
本物の顔は使いものにならず…
夜に技術局で免許証の画像から作ったデスマスクと、体の欠損部位のパーツが届いて
私が徹夜で人形から人の顔へ……人の顔から優しい母親の顔へと近づけ……
……先ほど
ロリポップ常務の居る斎場へ運び込んだ
「あぁ…これは死ねないわ」
直ぐにわかったよ
総務局でコロナ隔離している女の子の家族同様、「誰かの為」つまり“利他”ってのが分かる家族なんだってね
しかも、
何故居ないのかと思ったら、ここに居たよ。
死んでからも
子供達が何も食べないのを心配してるので、奥で常務が「豚汁、白米の塩おにぎり、糠漬け」を作っている…
「別にあの世に行く必要なんてないよ…大人に成るまで現世(うつしよ)に居れば?」
…嬉しそうに笑ってた……
「暖かい葬儀にしなきゃね」と常務が言う
ニャンコのグリーフケア部隊もやって来ている
この家族に悲しすぎる別れは似合わない