「え、何それ?」
斎場に連れてきた個人の母親がとり乱して暴れ、保安部の女の子が病院に運んで行ったそうだ。
こんな事は希にあるんだけど、亡くなったのは22歳の一人娘だから尚更
私は離れた他のラボで復元施行中、今日の超早朝に様子を見る為、斎場に入った。
お母さんは鎮静剤を飲んで落ち着いて、娘さんの横で疲れて寝ているそう
母親に会う前に担当の専務に話を聞いたら
「それ、取り乱すって……」
亡くなるって結果に至る病名は「くも膜下出血」で、実家のベッドで亡くなる
シングルマザーの殆ど場合、家庭環境の背景もぐちゃぐちゃで、ぶっちゃけ貧困で、様々なそうなった言い訳が出て来るんだけど、この親子は違う。
母親は正看護師で家庭には十分お金があり、亡くなった娘さんも普通に大学に入り、企業から内々定ももらっていて(同僚談)……
正に「青天の霹靂」で
母親は様々な事情があり、親戚付き合いも完全に切れていて肉親は娘さん一人で、昨日突然天涯孤独になってしまった。
これ……私の場合と似ているけど、私だって何て声を掛けたら良いか分からない
人が近寄れない空気が充満していて、この親子を守る様に、アイちゃんとマコトちゃんが、娘さんの遺体とお母さんを囲んでいる…
アレクちゃんがアイちゃんとマコトちゃんを呼んで交代、2ワンコはゲッソリ疲れて朝ごはんを食べているよ……
間もなくカールちゃんもやってくる
先ほど同僚の看護師が様子を見に来たけど、声なんてかけられないし、私だってお母さんと同じなんだから頑張れなんて絶対に言えない。私の10倍様々な修羅場を超えた銀座のクラブのママでさえたじろいだ
今は大型ワンコ達だけが頼りの情けない状況
それでも私の中華屋さんのお母さんが、何とか「碾茶」を飲ませてくれ、抱き寄せて居てくれている、有り難い……
「モモ、あのオバチャンにゃ」とノエルちゃんが官能波で伝えてくれた。
ひかりのお母さんだ……
専務に伝えると直ぐに連絡して、今すぐ向かってくれるそう。
こうなったら当社の総力戦しか無い
当社始まって以来の「修羅場」がやって来る
…………桃子の日誌…