第三ラボのロビー
先ほど、遺族や故人が来場する前の時間、麻理鈴のピアノが爆音で曲を奏でている
斎場って………
何度も葬儀を施行し続けると斎場は淀む。
何て言うのかな……判らない“何か”の流れが止まった様になるんだよ
まぁ葬儀って楽しい事じゃ無いからね
もちろん換気をしても変わらないし、同業他社の斎場だって同じ
今朝の第三ラボ斎場がそんな感じになって……
過去に人だった邪 (よこしま) な者などは、ノエちゃんが睨むだけで祓われるけど
痕跡は残る
それを祓う力があるのは「人」が奏でる音楽なんだよ
この第三ラボの斎場部分は小さめ。
ロビーも狭いので、ここにはローランドの電子グランドピアノGP609を設置してる。
電子ピアノって日々進歩が目覚ましいけど、微細な表現力がまだ少し足りない
しかし第三ラボでは、それを補うくらいの外部スピーカーを接続してあり凄い爆音がでる
麻理鈴は全力で窓ガラスが割れんばかりのエネルギーで電子ピアノを弾いていた。
最後にB'zの「Love Phantom」を弾き
「大分剥げ落ちたな、あースッキリした~」と、演奏台から降りてきた
なんか………
久しぶりに“Love Phantom”を聞いたよ
格好良いこの曲は、以前、当社楽隊オーディションでピアノとエレキギターの課題曲になってたけど
難しいのは導入部分の表現方法だけ、
後は指の動きが早いだけでそれ程難しく無いし、曲も濃すぎるからすぐに飽きたんだよね
しかし……
「あっ、桃子っちも何か弾いて~」と麻理鈴に言われて、私も色々と弾いた。
ふとボリュームを見ると、最大ではなく三分の二。これであの音量で弾かれると挑戦されてるみたいで私も燃える。
数曲を全力で弾いて……
私も「Love Phantom」を弾いた。
もちろん麻理鈴に挑戦しての事
普通のピアニストならコンクール以外、こんな事はしない。
でも私達は雑草ピアニスト
こうやって全身全霊、切磋琢磨してきたんだよ
弾き終わって……
「どうよ~」
『うーん…まあまあかなヾ(^^ )』
ムカッとしたけど、お互い様。
お互い演奏技法をちゃんと認めているんだよ
そう言えば3ラボの事なんかスッカリ忘れてた
全ての窓を全開にして早めのお昼ごはん(^^)/
今日はキャンディが作ってくれたよ
ロビーもホールもすかすがしい……(^-^*)
移動してると麻理鈴からメール。
「Love Phantomをアレンジし直して、またオーディションに使わない?」
『うん良いね!アレンジ宜しくな (^^ゞ』
と返信した。
どんな「自己が作り出した幻」を作り直すのか?
そして、ピアノの勝負
次こそ決着つけてやる…乂-д-)
………桃子の日誌…