………総裁日誌、記載途中
もう産まれた仔牛には
名前は付けないの……
そう牧場の小っちゃな女の子は言った
どうして?
名前を付けも直ぐに居なくなるから………
私は返す言葉が無い
今から4年程前、そんな事があった。
世の中が…
「魔ン棒(まんぼう)」のさなか、朝早くから総務局と後輩社長宅の子供達は、牧場見学に行った。
今回のツアーには、
例の曹洞宗の雲水を同乗させてある。
この牧場主とはある葬儀で知り合ってからの付き合い。
この牧場には、約3年前位にも総務局の子供達が見学に来ていて、産まれたばかりの仔牛にミルクを飲ませたり、走り回ったり……
そして「名前」を付けた。
先々週、その牧場主から
「あの二頭の牛、出荷したよ」と連絡が入り、今日の見学ツアーだ……………
…………………当社随一の「胆力」の持ち主…麻理鈴保安部長から連絡が来て、今は子供達も「心の折」も付いて元気になっているけど、中にはまだ落ちたままの子供もいるそうだ。
ツアーの目的は
「縁(えにし)」が強く結ばれた身近な者が死ぬとは「何故、命を頂きます」なのか「自分達が生きる為に、他を殺し続けなければ生きられない」
故に「感謝の心が大切なんだ」を実体験を持って理解させるきっかけにする為。
自分達が名前を付けた仔牛が、当然生きていると思っていたのに3年後に会いに行くと、当たり前に殺されて、食肉となってスーパーに並んでいる
大人だって結構衝撃を受けるのに、子供には断じて受け入れがたい事象。
帰り…バスに戻り泣いてる子供達の為に雲水を用意したってワケ
彼は悩みながら「典座教訓(てんぞきょうくん) 食事の大切さなとが説かれている」と「五観の偈(ごかんのげ)」を用いて
「命を頂く事」に付いて子供達にも分かり易く説いた…………
牛の飼料を作る人、牛を育て出荷する人、賭場の人、それを運び加工する人、食肉を販売する人、調理する人……
後片付けをする人
そんな牛の命や、自分達の前に食事として並ぶまでに関わった人々の命の行いに、自分達は報いなければ成らない。
今、それらに報いる為に出来る事は
「感謝する事」だけなんだと教えた………
……………子供達はお腹を空かせて帰って来た。
総務局でのお昼ごはんは「すき焼き」
暗かった子供達も明るく食べている
しんみりした暗い表情でマズそうに食べる事は、自分達が生きる為に犠牲になった者を侮蔑する事に繋がるからね。
雲水も子供達の為に肉食をしている
今日の出来事は
子供達…そして若い雲水をちょっぴり大人にした様だ。
……………禅道と猛烈な食育