読者の皆さんは
「悲しみよこんにちは」って言う映画をご存じでしょうか?
昔のイギリス映画で
セシルと言う若い娘が、願望を実現する為に自分の恋人まで利用し邪魔者を陥れる
〈悲しみよこんにちは セシル〉
そんな映画……
似たような事はその辺に転がっている。言うなれば大人の事情ってやつ
耳がもげる演奏の後、私達はメンバー全員の前で、ヴォーカルの女の子とベースの女の子だけに
「ウチの正社員として
音楽葬をやらないか?」
と声を掛けた。
もちろんその場では断るけど、後で彼女達が仲違いする事を折り込んでね
案の定後日、ヴォーカルの女の子だけ後日に後輩社長に連絡があり、翌日、母親と一緒に面接をした
後輩社長の話しに依ると
ヴォーカルの女の子達は一応公立の進学校。彼女は母子家庭で、(ここまでは事前に知っている)
母親は正社員として働いていて、高校は無償で、経済的に困ってはいないけど、私立大学に入れる殆ど余裕も無い
奨学金も返済がキツ過ぎるから、進学は諦めて就職しようと思ってもコロナ騒ぎで就職先が無くて、渡りに船だった様だ
バイトでの見習い期間の終わり頃
半べそで出社した事があってワケを聞いたら
「ここで働く事を、散々嘘をつき騙し続けてきたのがバレたのに、みんなが心配してくれた」と。
『どんな心配してくれたの?』と
専務が聞くと
まぁ……心配する言葉の裏にはどす黒い気持ちが蠢いていて
ある読者の方が言って思い出したことわざ
これそのもの……
人にはね…自分より幸せになる事を許せない者が大勢いるんだよ。
それは、貴女も彼女達も私達も同じなんだと
私達は彼女だけを得ようと策にハメ、
彼女はメンバー全員を出し抜こうとし、
他のメンバー全員は彼女を引きずり下ろそうとする。
皆、同じだ
そう専務が、ウブな女の子にも分かるように説明すると、理解してまた泣いた…………
…………昨日は女の子のデビューの日
チェリーブラッサムは、喪主である奥さんから死んだ旦那さんの為のリクエスト
彼女は白いロングドレスに肩から漆黒のサッシュの出で立ちで、涙をこらえながら最後まで唱い切った
どこまでも、どこまでも爽やかに………
私は司会席で仰天した
喪主である奥さんが立ち上がって拍手していて、横に座っていた息子さんもつられて立ち上がって拍手………
60人程の会葬者全員が立ち上がって、彼女に拍手を送った。
出棺を見送る
素晴らしい青空
ふと、まだ小さい桜の木を見ると
蕾が今にも咲きそうなくらいに膨らんでいる
私達の会社にも
新しい季節にふさわしい女の子が来てくれた
春が来る………